2012年5月19日土曜日

INITIA Consulting|INITIA Archives|経営学講座|1. 組織論:第11章「組織と環境:組織の同型化」


 1. なぜファミレスやコンビニという形態がこれほど広がったのか?

前回、組織がおかれている環境に適した組織構造を作り上げないと、組織は有効ではなくなることを説明しました。いわゆるコンティンジェンシー理論です。環境に適応した組織を構築しないと、その組織は有効性を失い、究極的には存続できなくなります。

 このコンティンジェンシー理論と類似の問題意識を持っているのが、ポピュレーション・エコロジー(個体群生態学)と呼ばれる分野です。なぜある種の組織は生き残ってその数を増やして行くのに対して、他の種類の組織はなくなってしまうのか。たとえば、表題にもある通り、なぜファミリー・レストランが外食の形態として支配的になるのか、なぜスーパーに代わってコンビニが主流の流通形態になるのか。これらの現象を環境という側面から説明する考え方の一つがポピュレーション・エコロジーです。言いかえると、ポピュレーション・エコロジーは組織形態の変化プロセスを動態的な見方から説明する理論です。

 「ポピュレーション」とか「エコロジー」といった生態学・生物学の考え方が導入されているのは、「組織が存続する」「同じ種類が増加して主流の形態を占める」などの現象を説明する際に、ダーウィンの進化論における変異や淘汰など概念を使っているからです。

 2. ポピュレーション・エコロジーの特徴

この理論の一つの特徴は、それぞれ個々の組織が生き残るかどうかではなく、組織の個体群=複数の組織だが同一種類の組織形態がなぜ生き残るのか、を分析していることです。なぜローソンやセブンイレブン、ファミリーマートといった複数の組織だが、コンビニという同一種類の組織形態が支配的になるのか、という問題意識です。つまりコンティンジェンシー理論はある組織が環境に適応しているかどうかを問題にするのに対して、ポピュレーション・エコロジーは(組織の)形態と環境との適応関係を問題にするのです。


なぜ南で行われ、多くの実行はありますか?

 もう一つの特徴は、組織自体が持っている変革能力をほとんど考えていない点です。このように考えるのは進化論の影響を強く受けているからです。人間にはある程度の環境の変化に耐えられる能力は備わっていますが、おおきな環境の変化には対応できないでしょう。彗星が地球に衝突し、地球の表面温度がマイナス何十度にもなるような環境に急に変わったとしたら、人類は滅亡するかもしれません。進化論では個体そのものの自己変革能力は限られていると考えています(これに対して、組織自体が変革能力を持っているという議論が組織の自己革新、いわゆるself organization=自己組織性の話です)。

 生物学に見られる「変異(variation)⇒淘汰(selection)⇒保持(retention)」という考え方に従うと、新たな組織形態の出現(変異)⇒組織を取り巻く環境による淘汰⇒生き残った組織形態の保持というプロセスにおいて、組織自体には変革能力がほとんどないために、ある種の組織形態が広まっていくのに対して、別の種の組織形態は消滅してしまうと考えるのです。その結果、環境にはある同じ種類の組織形態が存在し(たとえばセブンイレブンやローソンなどの"コンビニ"という形態)、別の形態(街の中にある小さなスーパー)は少数派になってしまうのです。もちろん、セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートなど形態のなかでの競争、いわゆる企業間競争があるため、コンビニチェーンの中でもつぶれるものはありま� ��が、コンビニという形態そのものは企業がつぶれようとも持続して行きます。この理論は、「企業の存続」ではなく、コンビニといった「形態の存続」を問題としているのです。

 3. 環境状態と組織形態の適合

 さて、最初の問題に戻りましょう。なぜコンビニといった新たな形態が、現在支配的になりつつあるのでしょうか。簡単に言うと、ポピュレーション・エコロジーの考え方に基づくと、コンビニという形態が、環境が要請する様々な条件の組み合わせに適合的であった、形態間の競争を通じて環境がコンビニという形態を選択した、と言うことになります。詳しくは次のように説明できるでしょう。


より多くの国境エージェントを必要とされる

 まず、コンビニという形態がアメリカから日本に導入されました。コンビニという形態はそれまでに存在していた既存のスーパーが進化してできたものではなく、アメリカに既にあった形態をイトーヨーカドーの鈴木敏文氏らが日本に移植したものです。したがって突然変異的に日本に新たな流通形態が発生したことになります。

 このコンビニという新たに出現した形態と、生鮮食料品店、酒屋、魚屋、肉屋、既存の街の中にある小さなスーパーや、大手スーパーチェーンなどとの間で競争が行われます。企業間競争を勝ちぬくために必要となる資源を獲得するのに便利な形態ほど、競争に打ち勝つ確率が高くなります。コンビニは「コンビニエンス」という概念のもとに、共働き/女性の社会進出、夜型への変化など消費者のライフスタイルの変化、消費者の嗜好の多様化、核家族・単身世帯の増加などの環境変化に対して、より高い適応を達成することが可能であったのです。それに対して、たとえば街の酒屋さんなどは、そのような消費者ニーズの多様化に対応することができず、次第に淘汰され、コンビニへの業態転換を余儀なくされていきます。

 この環境のもとでは、コンビニが合理性や正当性、ある種の"市民権"を得ることになりますから、コンビニという形態が、環境の中で保持されて行きます。それと同時に、酒屋さんなど個別の商店形態は、スーパーやコンビニなどにどんどん顧客を奪われて結局淘汰されてしまいます。このようなプロセスをへて、コンビニという新たな流通形態が数を増やし、経済環境の中に定着していくのです。

 4. 組織の同型化(isomorphism)

 ポピュレーション・エコロジーでは、生態的環境における選択プロセスが機能するので、ある組織形態が有力になるというプロセスを説明していました。これは言いかえると、どの組織も同じ形態に収斂して行くという現象を説明するものでもあります。この現象に関しては、組織間関係論のなかの制度派組織論と呼ばれる分野で、組織の同型化(isomorphism)という概念でも説明されています。


方法turture

 同型化とは、ある組織が他の組織と同じような環境に直面したときに、組織の形態を他の組織と同じ形態にさせてしまうという制約プロセスのことです。たとえば多角化した企業の多くは職能制組織ではなく事業部制組織がとられる傾向にあります。この現象に関して、アルフレッド・チャンドラーという人は、多角化の結果として事業部制組織が採用されると考えています。しかし同型化の考え方は、社会に存在する制度的な要因の結果として多角化企業では事業部制組織が採用されると説明します。つまり、「多角化した企業で事業部制を採用していると、どうやら組織のマネジメントがしやすいようだ」という考え方が広まることによって、他の多角化企業も同じように事業部制を採用してしまうわけです。

 他の事例で見てみましょう。最近IR(インベスター・リレーション)がはやっていますが、IRを行った企業の株価が高くなるという現象が見られると、他の企業もIRを競って導入してしまいます。ましてや「IRをしない会社は古い」という社会的風潮があるとしたら、IRしないことにはその会社に対して正当性が与えられないことになります。このようにして同じような企業行動があちこちで見られるようになるのです。

 どの組織においても形態が似てくるという現象に対して、ポピュレーション・エコロジーの代表的研究者であるハナン=フリーマンは、生態環境における選択プロセス、つまり競争が起こることによって、同じような組織の形態が(結果として)残ってしまうという競争による同型化で説明します。それに対して、アイソモルフィズムの概念を打ち出したディマジオ=パウエルは、制度によっても同型化が進む、つまり制度による同型化をとりあげ、同型化が進む要因としては下記の3つを指摘しています。

(1)強制的同型化:政治や法律などの強制力を伴うことから発生するもの
(2)模倣的同型化:何らかの不確実性に直面している組織が、モデルを模倣することによって発生するもの
(3)規範的同型化:専門家の言っていることや、組織を越えたネットワークが存在することから発生するもの


 上記の3つの要因の背後にあるキーワード、同型化を考える際のキーワードは"正当性"です。何に依拠して正当性を確保するか、法律による正当化であれば強制的、ベストプラクティスやベンチマーキングなど模倣することによって正当化する場合には、模倣的同型化になります。「専門家が言っているから」という理由で、誰もが同じ行動をとり始める場合には、規範的同型化の現象が生じていることになります。

 つまり何らかの要因に基づいて正当性を確保した形態を誰もが求めることによって、同型化が進むのです。酒屋さんがコンビニに転換して行く現象がこれほど多く見られるのも、以前酒屋を営んでいたお店がコンビニに転換することによって成功した事例が多くあったために、そのような現象が加速したと仮説的に考えられます。

 ポピュレーション・エコロジーやアイソモルフィズムの考え方は、組織が変化・進化していく一つの考え方とも捉えられます。そして、アイソモルフィズムの考え方によると、組織は必ずしも経済合理性の原理に基づいて変化して行くわけではないという説明の一つの概念的ツールになります。

 参考文献

DiMaggio, P.J. and W. W. Powell, "The Iron Cage Revisited: Institutional Isomorphism and Collective Rationality in Organizational Fields," American Sociological Review, Vol.48, 1983, pp.147-160.

小林淳一・木村邦博 編著 『考える社会学』ミネルヴァ書房、1991年



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