2012年5月6日日曜日

北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会


「拉致問題の解決のための国際人権包囲網構築と食糧支援問題にどう向き合うか」

                     救う会神奈川 代表 川添友幸
1、はじめに

私は『北朝鮮に拉致された日本を救う神奈川の会』の代表として横田めぐみさんを始めとする拉致被害者と拉致された可能性が否定する事が出来ない特定失踪者の救出活動とフランスのパリに本部を置く。国際人道団体『国境なき記者団』のメンバーとして記者クラブ制度の廃止や独裁国家での報道の自由を求める活動を行っています。

2、日本人拉致問題の解決を求める共同書簡と在京の大使館訪問
2011年2月16日の金正日の誕生日にあたり、救う会地方組織と北朝鮮の人権問題にとりくむNGO諸団体、個人で、日本人拉致問題の解決を求める共同書簡を発表して、在京の各国大使館宛に送付しました。

さらに2月14日には有楽町の外国人特派員協会で賛同人有志と拉致被害者家族の横田滋さんとともに共同書簡を内外に訴える記者会見も行いました。

その後、欧米を中心にした19ケ国の在京大使館を、訪問し、人権問題として日本人拉致問題を訴えました。要請行動に参加しているのは、救う会埼玉の竹本博光代表、ヒューマン・ライツ・イン・アジアの加藤健代表、特定失踪者家族の藤田隆司さん、救う会ふくしまの菅野重信代表です。

訪問した大使館はノルウェー、ベルギー、フィンランド、アメリカ、スペイン、ドイツ� �オランダ、イギリス、ポーランド、スイス、フランス、EU代表部、カナダ、デンマーク、チェコ、インドネシア、スウェーデン、バチカン です。大使館では以下4点の要請を行った。①北朝鮮の人権状況を調査する独立調査団(Commission of Inquiry)設置のための国連決議採択の、②拉致被害者が存在する国に対し外交ルートを通じての北朝鮮や関係国への真相究明、③北朝鮮と国交のある国は外交チャンネルをしかして、日本と北朝鮮の交渉への協力・情報収集での協力、④北朝鮮に在外公館が有する国には、北朝鮮の動乱時に拉致被害者や特定失踪者が平壌の在外公館に逃げてきた際の保護の要請を行いました。

大使館側は大使や公使参事官等が対応されましたが、反応としては、異口同音に「これだけの期間、拉致問題を何故、日本政府が放置しているか」と言う疑問、「自国としても出来る限り協力出来るとはしたい」、「我が国が拉致される被害国なら絶対に、徹底的に交渉をして取り戻す」と言う前向きな対応でした。   

特筆するべきなのは応対した担� ��者が、政府が拉致被害者として認定している17人の拉致被害者以外にも拉致の可能性がある特定失踪者が数百人いると、説明した特定失踪者家族の藤田隆司さんの話を聞いて、特定失踪者の存在を初めて知り、大変驚かれていました。

3月11日、カトリック教会の総本部であるローマ法王庁大使館も訪問しました。ローマ法王庁大使館との面会の際は、拉致問題の解決だけでなく、信教の自由が基本的人権である点を強調し、北朝鮮でのキリスト教の迫害の実態を説明しました。さらにキリスト教徒が迫害される場面もある映画「クロッシング」のDVDをお渡し、大使からも北朝鮮の信教の自由の侵害は非常に問題だと言いう発言を頂きました。


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4月26日には在京の大使館訪問の報告と国連総会での北朝鮮非難決議の中に人権侵害の調査を行う独立調査団(Commission of Inquiry)設置の盛り込みを求めて、外務省総合政策局人権人道課を訪れました。外務省としては独立調査団に対しては、まだ関係国でも非難決議への盛り込みに積極的な国は少なく、昨年の国連総会での北朝鮮非難決議採択の際も独立調査団を盛り込むか検討はしたが以下の2点で見送ったそうです。①盛り込むと今までの非難決議に賛成した国が、自国の人権状況の非難に飛び火するのを恐れて、反対に回る可能性があり、決議案の採択は出来る限り多数の賛成国の採択を得るために見送ったそうです。②現在の北朝鮮に人権報告官が入国できない中で独立調査団を設置しても、拉致問題解決の効果が期待できない。

さらに日本政府として拉致問題の解決は最優先課題として捉えている。在外公館を通じて、拉致問題の啓発と国連総� �での非難決議採択のために全力を挙げています。現在、国際社会での北朝鮮へ圧力としては国連総会での非難決議しかないのが現状であり、今後、状況が変わり、独立調査団の必要性が出てくれば、日本政府としても決議案に盛り込みも検討する可能性はあるそうですが、、現状ではそのような段階ではないそうです。特定失踪者問題の広報については関係部局と連絡を取り、対応を検討したいそうです。

3、救援運動のパラダイム転換を

今回の在京の大使館への要請行動を行った目的ですが、今までの私達の日本人拉致被害者の救援運動の中心は、アメリカの北朝鮮への制裁と韓国の拉致被害者家族との連携が中心でした。しかし、現在の状況では韓国の拉致被害者家族会内部の意見対立から家族会は分裂しており、韓国国内� ��論も全くと言って拉致問題に関心がないのが現実です。

アメリカにおいてもオバマ政権の外交政策順位からも、オバマの戦場と言われているアフガニスタンや核問題を抱えるイランが最優先であり、北朝鮮政策の政策順位は低いと思います。そのような状況から、もう韓国やアメリカを頼りにした救援活動だけでは、解決道筋をつけるのには程遠い状況です。2002年に5人の拉致被害者が帰国した小泉総理と金正日総書記との日朝首脳会談から9年も経過しても、全く拉致問題の進展がない現状には、私達のアメリカ・韓国を中心とした国際連携の運動方針も見直す時期が来ているのでは思います。

4、北朝鮮に無関心な欧米各国

各国の大使館を回る中で、感じたのは欧米各国が北朝鮮から直接的な被害を受けていません ので北朝鮮と言う国に対する理解がないという点です。これは何も大使館に限った話ではなく、私もメンバーであるフランスの国際人道団体の『国境なき記者団』のパリの本部を訪問した際にアジア担当デスクのビンセント・ブロッセル氏と懇談した際にブロッセル氏が「金正日とアフリカの独裁者アミンやキューバのカストロ議長との違いは何ですか」を質問されて、答えに窮しました。欧米の人権団体でも北朝鮮に対してこのような見識である事に驚きです。

5、食糧支援と言う外交カードと各国の対北朝鮮国内での情報収集の実態


米国の大恐慌の重要性

最近、欧米と北朝鮮との外交関係を見るときに出てくるキーワードに問題に北朝鮮への食料支援問題があります。
今年に入り、イギリスを公式訪問した北朝鮮の崔泰福・最高人民会議議長がイギリス政府に食糧支援を訴えたことが伝えられニュースに注目が集まりました。3月には『世界食糧計画(WFP))が、北朝鮮の食料支援要請を受けて行った現地調査の結果について日米韓を含む約40カ国の代表に説明、約43万トンの食料援助が必要と言う報道が流れました。この現地調査ですがどのような調査だったのか調べたところ、国連関係筋の情報では調査期間も短く、調査人員も少数で北朝鮮の監視付きの調査であったそうです。

WFPのような国際機関の食糧支援要請が本当にこのような不十分な調査が根拠であるなら、非常に問題だと思われます。さらにこの不十分な調査が根拠になった支援要請を受け、現在、スイスやカナダなどの数カ国� ��食料支援の動きがあるという情報もあります。しかし、イギリスは北朝鮮への食料支援に否定的です。マーティン・ユーデン駐韓国イギリス大使が、「平壌の市場に行ったところ、食糧は豊富にあり電化製品も売っていた」と証言していますし、イギリスの元北朝鮮大使ジョン・エベラード氏も、「市場で『国連世界食糧計画(WFP)』『大韓民国』と書かれた袋に入ったコメが売られており、国際社会が支援した食糧は住民に渡っていない」と証言して北朝鮮の食糧危機に否定的な見解を示しています。

この認識の違いにはイギリスは北朝鮮のピョンヤンに大使館があり、多数の外交官が駐在して、ある程度の北朝鮮内部情報を得ている点を指摘する意見もあります。しかし、ヨーロッパの大多数の国は北朝鮮と国交が有ります� ��現在、ヨーロッパで国交がないのはフランスとエストニアのみです。フランスが北朝鮮と国交を結ばない理由は人権問題と北朝鮮体制が不安定であるのが理由だと言われています。今、北朝鮮と国交を結んでも体制が崩壊したりするリスクや現在の経済関係以上に関係強化するメリットがないと分析するフランス人的な合理的な計算が有ると言われています。国交はなくてもフランスと北朝鮮とは天然資源ビジネス等の経済的な深い関係があります。さらに北朝鮮は『国際連合教育科学文化機関(UNESCO)』に加盟しており、UNESCO経由で北朝鮮情報をフランス政府は得ているそうです。

国交を結んでいるヨーロッパの国にも、ピョンヤンに大使館を置いている国は旧共産圏の東欧の国ぐらいであり、圧倒的に少数です。そのような背景か� �食糧支援に積極的なヨーロッパの国々には決定的に北朝鮮情勢に対する情報量が欠如しているのが実態です。

韓国は昨年11月の延坪島への砲撃事件以降、WFPなどの国際機関の食糧支援要請にも砲撃事件を理由に食糧支援にも慎重です。先般も与党ハンナラ党の尹相現議員が情報当局の情報として国際社会に食糧支援を要請している北朝鮮が、コメ100万トンを軍人用に備蓄していると公表しています。韓国の情報機関の対北朝鮮情報収集は脱北者情報だけでなく、北朝鮮政権中枢部からのヒューミット(人を通じた情報収集)もあり、情報確度も高いとされています。


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アメリカは北朝鮮への食糧支援の準備を表明しているが、まだ具体的な支援方法は決めていません。国務省筋の情報ではアメリカ政府の食糧支援は北朝鮮を米朝交渉のテーブルに引き出すための外交カードに考えており、食糧支援を実施するかは非常に不透明ではないかと言う見方です。ちなみにアメリカの情報機関の対北朝鮮情報収集はシギント(通信、電磁波、信号等を通じた情報収集)が中心ですが、人道支援団体要員等からのヒューミットも行っているそうです。

6、北朝鮮への食糧支援の実態

食糧支援にはいくつかのやり方があります。支援国がWFPのような国際機関に食糧や資金を援助する方法や支援国が直接、北朝鮮国内で食糧を配布する方法がありま� ��。どちらにもしても北朝鮮国内での食糧配布活動には北朝鮮当局の関与が絶対条件です。

飢えて苦しんでいる人を助けるのは国際社会として当然の責務です。しかし、この理論にも落とし穴があり、以前、北朝鮮との友好関係を進める日朝友好地方議員と懇談する機会があり、私が北朝鮮の食糧支援問題の話をしたところ「北朝鮮と言う特殊な国では支援物資が体制に流れるのは分かっている。しかし、100万トン支援して100キログラムでも国民に入れば良いではないか」と言われた。同じような応答して以前、WFP日本支部にも北朝鮮の食糧支援問題で問い合わせをしたところ、「自分たちWFPは政治的な事はわからない。困っている人を助けるのが仕事であり、アフリカの独裁国家でも支援物資が独裁者に流れていると言う指摘が有っ� ��が、少しでも国民に口に入るなら支援を続ける」と言う返答でした。では実際に支援している食糧が北朝鮮の国民の元に届いているのでしょうか。この疑問の回答は非常に難しいと思います。北朝鮮は国際人道団体のヒューマン・ライツ・ウオッチも指摘していますが世界一の閉鎖国家です。先に述べたピョンヤンに駐在している大使館が有る国の外交官ですら自由に情報収集活動は出来ません。外国メディアも自由な取材活動が出来ません。イギリス等の外交官達も断片的な情報から先に述べたような分析をしていると思います。

北朝鮮からの脱北者の証言を見てみると、最近の報道では韓国の脱北者支援NGOの『北韓民主化ネットワーク』が3月末、韓国在住の脱北者500人に調査したところ、78・2%が支援食糧を「受け取� ��たことがない」と回答し「受け取ったことがある」とした人のうちでも、27・4%が支援食糧を「当局の指示に従い返納した」と答えた。支援食糧の行き先については、73・6%が「朝鮮人民軍」、69・0%が「朝鮮労働党幹部」と回答したとアンケート結果が公表しました。

さらに他の脱北者情報では、韓国や赤十字の表示がついた支援食糧を港で別の袋に詰め替えたりして、いったん配給された食糧も後で当局が回収する例も伝えられています。ただ脱北者の証言の正確さには様々な議論もあり、決定的な証拠とは言えないと思います。


次に最近、平壌駐在の外交ルートから指摘されているのは支援された食糧が軍隊の備蓄に回り、備蓄からから闇市場に流れて売られていると情報です。
以前からWFPや韓国のNGO団体のネームが入った袋が闇市場で売られていると報道が出ています。この報道に対してWFPは闇市場ではWFPのネーム入りの袋が再利用されているだけであるという公式見解を示しています。支援された食糧が国民から取り上げられて、軍隊や政府機関で備蓄され闇市場に横流しされ、国民には食糧が入らず、国民は闇市場で購入するしかない事実は見過ごすことが出来ないと思います。

7、どのような食糧支援の方法がベストか

では北朝鮮への食糧支援をどのような方法で行うべきでしょうか。情報当局筋の情報ではWFP等の人道支援団体が北朝鮮で食糧支援を行う際に、ハングル語を話せる人間を現地要員に入れない事を条件にしているそうです。これは現地要員が配布地の地元住民と会話すると配布後、 食糧が当局によって取り上げられてしまう事実の発覚を恐れているからです。このような条件を逆手にとり、配布地の地元住民とコミュニケーションを取る事が出来るように、現地要員にハングル語の会話能力がある人を必ず入れさせ、配布地の住民とコミュニケーションを取らせ、配布活動が適正に行われているか、チェックする必要があります。

さらに配布方法にもいくつかの工夫が必要だと思います。例を挙げるなら配布地で炊き出しを行い、現地住民にその場で食糧を食べさせるようにする。あるいは支援する食糧も保存期間が短い卵やバナナ等を送るのも有効な方法だと思います。基本的には北朝鮮への食糧支援については、提供国や国際機関が食糧支援の前提条件として、国民の元に届くために、厳しい条件を、北朝鮮に 付ける事を共通認識とするべきです。北朝鮮側も厳しい条件を課せば食糧支援を断ってくる可能性が高いと思います。そもそも北朝鮮研究者の分析では北朝鮮が現在、食糧支援を国際社会に求める理由は、現状においては食糧不足していないが、金正日総書記の後継者である金正恩体制維持固を目的とした食糧支援ではないかと言う見方です。

8、まとめに

北朝鮮では国民生活より体制維持が最大限優先されている独裁国家です。その証拠が食糧難の根本的原因については国家予算の88%の「過度の軍事費」です。まずは北朝鮮と向き合う時、北朝鮮の内情がどうであり、どのような国家形態であり、今までの外交・内政政策を細かく分析する必要があると思います。

北朝鮮の食糧問題も拉致問題のような人権問題も最終� ��な問題点は金正日独裁体制だと思います。問題の解決のためには北朝鮮との交渉、経済制裁、体制打倒など様々な方法論の議論が有りますが、私達は問題解決のために内外の友好NGO団体と連携し、人権と言うカードを使い、北朝鮮に対する国際人権包囲網の圧力で追い込んでいきたいと思います。(終)



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