2012年5月10日木曜日

アメリカンジョーク#171


トピック(1711):「Is It 1929 Again?」   2008/10/7

Watching the slipping economy and Congress's epic debate over the unprecedented $700 billion financial bailout, it is impossible not to wonder whether this is 1929 all over again. Even sophisticated observers invoke the comparison. Martin Wolf, the chief economics commentator for the Financial Times, began a recent column: "It is just over three score years and ten since the [end of the] Great Depression." What's frightening is not any one event but the prospect that things are slipping out of control. Panic -- political as well as economic -- is the enemy.

滑落する経済を見るにつけ、前代未聞の700ビリオンドル(≒70兆円)金融救済に関する議会の大論争を見るにつけ、これは1929年の二の舞なのではなかろうかと疑わずにはいられまい。事情通の評者でさえ比較してみたくなる。フィナンシャル・タイムズで経済コメンテーター主任をつとめるマーティン・ウルフは最近のコラムをこう書き出した:「大恐慌(の終り)からちょうど70年ちょっとである」。コワイのは、物事が制御不能になって歯止めがかからないという見通しそのものである。政治であれ経済であれ、パニックは敵だ。

There are parallels between then and now, but there are also big differences. Now as then, Americans borrowed heavily before the crisis -- in the 1920s for cars, radios and appliances; in the past decade, for homes or against inflated home values. Now as then, the crisis caught people by surprise and is global in scope. But unlike then, the federal government is a huge part of the economy (20 percent vs. 3 percent in 1929), and its spending -- for Social Security, defense, roads -- provides greater stabilization. Unlike then, government officials have moved quickly, if clumsily, to contain the crisis.

当時と現在とには、類似点がある。一方、相違点もある。当時もそうだったが現在、危機直前のアメリカ人は借金漬けだった。20年代は自動車、ラジオ、家電製品(への借金)。ここ10年は住宅、悪く言えば、吹っかけられた住宅価値(への借金)。当時もそうだったが現在、危機は不意打ちで人々を襲い、世界的な広がりを見せる。とはいえ、当時と違うのは、連邦政府が経済の大きな部分を占めていること(1929年の3%に対して20%)と、政府の支出(社会保障・国防・道路)が安定化へより大きく寄与していることだ。当時と違って、政府高官たちの危機を封じ込める対応は、器用さに欠けていたかもしれないが、素早かった。

あはは。大恐慌再来論が無責任に活字となって出てくる風潮には一本釘を刺� ��たい人がいてもおかしくはない。6日付Wポストのコラム「Is It 1929 Again?:By Robert J. Samuelson」はこう書き出す。

第2次大戦後、米国の不況は10回あった。平均値で言えば、10ヶ月となる不況期間の失業率ピークは7.6%である。最悪の失業率は73〜75年の9%、81〜82年の10.8%だが、直近9月の失業率は6.1%に過ぎない。確か、大恐慌時の失業率は25%だったハズだ。

コラムニストのサミュエルソン氏によれば、預金保証額を25万ドルへ引き上げた政策は引き出しパニックを未然に防ぐという効果があるという。アイルランドとドイツは預金を全額保証する措置をとったらしい。

初めて知ったのだが、FRB議長のバーナンキは大恐慌を専門とする学者だそうだ。この間、FRBは既に1トリリオンドル(≒100兆円)の資金をあれやこれやで金融機関へ融通しているらしい。日� ��の国家予算を超えるスゴイ金額だが、まるでポールソンがバーナンキを救済しているみたいだ。これがNYタイムズだったら、ポールソンがバーナンキを救済し、バーナンキはポールソンの旧職場を救済していると暴きたがるのだろう。

コラムは次の一段落で〆た。

The economy will get worse. The housing glut endures. Cautious consumers have curbed spending. Banks and other financial institutions will suffer more losses. But these are all normal symptoms of recession. Our real vulnerability is a highly complex and global financial system that might resist rescue and revival. The Great Depression resulted from the mix of a weak economy and perverse government policies. If we can avoid a comparable blunder, the great drama of these recent weeks may prove blessedly misleading.

(米国)経済は今後一段と悪化するだろう。住宅の供給過剰は継続する。身構えた消費者は支出を抑制し始めた。銀行や他の金融機関はさらなる損失に七転八倒するだろう。しかし、こうしたことは、みな、不況になればごく当たり前の症状だ。我々が抱える本当の脆弱性は、高度に複雑化して国境を越える金融システムにある。(米国の)救出や再生なんぞに抗うことだってあり得よう。大恐慌は、弱体経済と屈折した各国政策とが織り成した結果であった。もし我々が類似のヘマを避けることができるなら、ここ数週間のスッタモンダはありがたいことにミスリーディングだったと露呈するかもしれない。

結句は、皆のものガタガタ騒ぐでないぞ、という意味だろうか。

愚行と無責任はお咎めを受ければいい。� �が、群集心理の暴走は慎みたいものだ。情報を発信するメディアは節度を弁えるべきだろう。ところで、日本の官僚ほどでもないが、日本メディアもお咎めを自分のものとして自覚しない口である。言ってみれば同類項だから、小手先の部分でしか官僚を攻められないのだ。

永久就職の日本の官僚は特殊な存在だ。日本をこれだけ借金漬けにした愚行と無責任とは咎められて然るべきである。全員無条件で監獄収容すべきだが、それは極端過ぎるというのなら、少々緩めて、全官僚の資産を没収して国庫に戻し1DKか2DKへ収容したらいい。民の税金を無駄にするのは、脱税同様、国賊である。目指すべきは官僚のパートタイマー制しかあるまい。

トピック(1712):「世界株安、米欧は危機の根元を断て」   2008/10/8

今朝起き掛けに表題の日経新聞社説を読んだ。週明け、ダウ1万ドル割れ、日経ダウ1万円割れ、欧州株式市場も下げがきつい。先月後半やや回復気味だった上海市場は国慶節による9/27〜10/5の休場が明けて、再び下げ基調となり、ピークから1/3辺りを行く。まさに「世界同時株安」といっていいだろう。困ったものだ。だが、幸いなことに、対ドル、対ユーロで円高である。

首題が「米欧は危機の根元を断て」とくるから、これはスゴイ。皆なす術を知らないのに、日経様だけが特別な処方箋を持っているのかと期待してしまう。書き出しの一段目に『今回は米欧金融機関の破綻など世界的な危機であり、問題の根は深い』とあるから、根の深い所での「解決策」があるらしい。ポールソンやバーナンキを� �びつけて教えてやれよ。

ところが、『同時株安の原因は米欧の金融問題だ』とくる。あはは。なんだよ。皆、普通に言っていることではないか。続いて『10年前の日本のように、銀行などの資本不足の懸念が残っては不信は消えない。危機の根元を断つには、米欧金融機関に公的資金で思い切った資本注入をする必要があろう』とくる。あはは。大上段に構えた「危機の根元」とは、金融機関の資本不足、なのかい。ショボンと拍子が抜ける。

不思議なことに、次の段落では『国際通貨基金(IMF)は米住宅バブル崩壊に伴う世界の金融機関の損失が約1兆4000億ドル(約140兆円)にのぼると推計した』ときた。IMFの文書は何回か読んだが、所詮、個別報告に基づく集計であまりアテにならない(個別そのものがアヤシイから )。とはいえ、不動産バブル崩壊に伴う「資産低下」こそが本来の「問題の根」じゃないのだろうか。

ここら辺が、事象解釈の違いなのだ。堅実な経済成長による「資産上昇」ではなく、バブル景気による「資産上昇」であったが故にそこにはアワの部分が含まれていた。それは何もアメリカだけではない。6/18付トピック(1647)で『4月14日付NYタイムズ「Housing Woes in U.S. Spread Around Globe:By MARK LANDLER」では欧州の住宅バブルを取り上げていて、アイルランドの住宅がこんなに高いのかとビックリした。欧米ともに住宅融資にからむ不良債権を金融機関はワンサと抱えている』と書いた。

リーマンが裏書してノーザンロック(現在イギリスで国営化)をMBS(モーゲージ担保証券)の世界へ引きずり込んだとか、AIGロンドンのスワップ部隊がAIG本体をガタガタにしたとか、関連しそうな事例はいくつかあるが、欧州の住宅バブルはアメリカの住宅バブルが「飛び火」したものであるのかどうか、ハッキリした根拠はない。住宅バブル自体は類似の経済現象だ、としておくのが当面無難だろう。

要するに、危機の根元は不動産バブルの破裂に伴う「資産価値の低下」であり、これは需給バランスが保てるレベル=「� ��」に到達するまで手の施しようがないのだ。その間、資産所有者と貸借関係にあった金融機関は痛手を受け、葬式なり野垂れ死になりそれなりの処分がなされる。それに伴って、株式市場がそれなりの株価下落に悩むのは自然の道理だろう。

さて「問題の根」についてだが、バブル崩壊後の処置については過去に参考事例が二つある。一つはS/L危機。このときアメリカはRTCが倒産した銀行の債権である不動産を大安売りした。従って、不動産価格は早期に底へ達し、4〜5年で経済は回復する。二つ目は日本のバブル崩壊。このとき日本は倒産すべき銀行を救済して不動産価格の下落に歯止めをかけた。従って、不動産は「偽底」を形成し、日本経済は長期に悩む。

S/L危機例では助演賞役者がいて、不良債権であるべ� ��不動産を高値で買い漁ったマヌケな投資家(日本)がババを引いた。アメリカに代って大損こいてくれる。今回のアメリカでは、マヌケな投資家が現れず、ババを引いたのは自国の偽装国策会社=Fメイ・Fマックであった。

そこで、ドモリのポールソンは第三の道(=金融機関が保持する不良債権及び不良関連証券を税金を使用して買上げる)を試行しようとしている。日本の二の舞はしたくないということもあろうが、「税金」の使用だから納税者へ損をかけないという建前を堅持する(できるかどうかは別にして)のが特徴的だ。

本来、米国金融機関は己の非を悔いて不良債権及び不良関連証券を連邦政府に投売りすべきである。住宅価格の下落が止まらない以上、抱えていたら損失がさらに増えるのは間違いない。しか も、差押え物件の管理費や保険(フラッド・インシュアランス等)や固定資産税や諸々の費用はバカにならないほど嵩む。だが、政府が買い取ってくれるとなると、スケベ根性が出てくるのだろう。遅きに失したとはいえ米国金融機関は「The first loss is the best loss」の精神を忘れてはならない。【同日追記】:本日の天声人語に「見切り千両」とありました。

トピック(1713):「Central Banks Coordinate Global Cut in Interest Rates」   2008/10/9

Central banks around the world cut short-term interest rates by up to half a percent on Wednesday after investors across Asia and Europe unleashed waves of sell orders onto already depressed stock exchanges.

弱り目に祟り目状態となっていた株式売買へアジアからヨーロッパにかけて投資家連中が一連の売り注文を解き放たれたように浴びせた後、水曜日(8日)各国の中央銀行は短期金利のレートを最大0.5%まで切り下げた。

The Federal Reserve, the European Central Bank and other central banks from Britain and Switzerland to Canada and China announced rate reductions within seconds of one another. The British government separately announced a plan to pump billions of pounds into the country's leading banks as part of a plan that would result in considerably greater government influence over the financial sector there.

FRB、欧州中央銀行(ECB)及びイギリス・スイスからカナダ・支那に至る他の中央銀行は次々に間髪を置かず利下げを発表した。それとは別に、英国政府は国内主力銀行へ数ビリオン・ポンド(≒数千億円x1.73)を注入するプランを発表した。イギリスの金融部門に対する政府の影響力(行使)としてかなり大掛かりなものとなるハズのプランの一部である。

The Fed said in a statement that, because of weakening economic activity, it had cut the Federal funds target rate by half a percentage point, to 1.5 percent. It also cut its discount rate by the same amount. The vote was unanimous.

弱体化した経済活動を鑑みてFFレートを0.5ポイント切り下げ1.5パーセントにするとFRBは声明文を出した。同時に、公定歩合を同様に切り下げる。(予定外の連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ)全会一致の投票となった。

なるほど、皆さん、よく学習しているね。大恐慌招来の反省として、各国政府の政策がバラバラだったことが一つ挙げられている。今回は早めに協調して対処しようというわけだ。8日付NYタイムズ「Central Banks Coordinate Global Cut in Interest Rates:By KEITH BRADSHER, DAVID JOLLY and EDMUND L. ANDREWS」の書き出しである。

あれ!? とすると、日本は蚊帳の外か、と思うなかれ。タイトルからしてNYタイムズは「利下げ」に注目した記事になっているだけのことだ。同日発表されたFRBのリリース「Joint Statement by Central Banks」では三段落の最後がこうなっている。


代は、メキシコの鉱山に落ちる

Some easing of global monetary conditions is therefore warranted. Accordingly, the Bank of Canada, the Bank of England, the European Central Bank, the Federal Reserve, Sveriges Riksbank, and the Swiss National Bank are today announcing reductions in policy interest rates. The Bank of Japan expresses its strong support of these policy actions.

日本の政策金利は0.75%で下げる余地がほとんどないのだ。【10/10訂正】10日付日経社説によれば0.5%だと。

さて、株式市場を意識した緊急協調利下げだったが、NY株式市場の反応は芳しくない。9月個人消費の冷え込み、住宅価格のさらなる下落等々、いいニュースがないことも手伝っていよう。

というより、今更利下げしたところで、金融機関の貸し渋りが解消できるものではないからだ。貸し手の心理は萎縮していて、貸さない、または、貸しても高利となる。バブル時に蔓延したリスク不感症の大失敗が懲りて、過剰な負の反応を示すのも無理からぬところ。仲間の銀行同士でさえ猜疑の目を向け合う。従って、中央銀行が政策金利を下げたところで、市中金利が下がるとは限らない。

まあ、暫 くはゴタゴタが続くが、各国の政策当局が協調姿勢を世間に印象付けたのは無駄なことではなかろう。実効はなくても、市場の群集心理が暴走するのを抑制する一助にはなると思う。それに、調達金利と貸出金利との利鞘で生きていく銀行が、いつまでも貸し渋りを続けるわけにはいくまい。貸さなきゃ生きられない運命なのである。と同時に、貸し渋りを止めろと部外者がいうのも、余計なお世話だ。

さて、こういうキャッシュポジションを高めるべき時期に、モル・スタへ投資した三菱UFJやリーマンの廃材を買った野村Hや、今後どんな事態になろうとも、日本政府は税金を使用して救済するではないぞよ。

【追記:10/10】
株価は世界的に順調に、順調過ぎるかもしれないが、下落している。1/3が目安とすれば、ダウ5000台になっても不思議ではない。G7がワシントンで行われるものの、奇手や新手は期待できないだろう。各国協調姿勢を示すのが関の山だ。

トピック(1714):「Taking Hard New Look at a Greenspan Legacy」   2008/10/11

"Not only have individual financial institutions become less vulnerable to shocks from underlying risk factors, but also the financial system as a whole has become more resilient." - Alan Greenspan in 2004

「全米的な支店網を持たない金融機関が潜在的な諸々のリスクによるショックに対して以前より脆弱でなくなっただけではなく、全体としての金融システムはさらに弾力性があるものとなった」:2004年アラン・グリンスパン。

George Soros, the prominent financier, avoids using the financial contracts known as derivatives "because we don't really understand how they work." Felix G. Rohatyn, the investment banker who saved New York from financial catastrophe in the 1970s, described derivatives as potential "hydrogen bombs."

金融界の大御所であるジョージ・ソロスはデリバティブとして知られる金融契約の使用を避ける。「何故なら、それがどんな働きをするのか、実のところ我々は理解していないからだ」。70年代にニューヨークを財政破綻から救った投資銀行家のフェリックス・G・ロハティンはデリバティブのことを「水素爆弾」になり得るものと言った。

And Warren E. Buffett presciently observed five years ago that derivatives were "financial weapons of mass destruction, carrying dangers that, while now latent, are potentially lethal."

そして、ウォレン・E・バフェットはデリバティブが「金融の大量破壊兵器(WMD)であり、今は大人しくしているが、致命的となり得る危険を孕んでいる」と5年前に予知的な正鵠を射ていた。

あはは。グリンスパンの言葉だけがイタリックになっていて、差別待遇だ! いやいや、既にグリンスパン犯人説は燻っていた。住宅バブルが発生したのも、それが破裂して金融システムがパンクしたのも、どうやら「誰かさん」が悪かったから、らしい。9日付NYタイムズ「Taking Hard New Look at a Greenspan Legacy:By PETER S. GOODMAN」の書き出しである。

NYタイムズ電子版ではアクセス数トップに輝いていた。

当方も数回それらしきことに触れたが、経済学音痴なので他人の引用にとどめた。別に、グリンスパン自体がエキゾチックなモーゲージや、その派生商品であるモーゲージ担保証券(MBS)や、スワップ(CDS)やを編み出したわけではない。容認した、というか、黙認した、というか、グリンスパンが2006年1月に退任するまでの間に、アヤシイ金融ツールがアレコレと開発されたのは厳然とした事実である。

トピック(1707)で取り上げたが、スワップ取引に特化したAIGロンドンの少数精鋭部隊=AIGFPの2005年営業収益は売上額の83%に達しているのだ。常識的に、マトモな実業ではない。

さて、この興� ��深い長編記事はグリンスパン語録が収録されている。

"What we have found over the years in the marketplace is that derivatives have been an extraordinarily useful vehicle to transfer risk from those who shouldn't be taking it to those who are willing to and are capable of doing so,"

(デリバティブを議会で精査することに反対して)「ここ数年に渡って市場で我々が見出したことは、デリバティブが、リスクをとるべきでない人から、リスクをとってもいいと思う人、そうする能力がある人へ、リスクを移転するのに、並外れて役に立つツールであったということだ」。

"We think it would be a mistake" to more deeply regulate the contracts.

(2003年上院銀行委員会で)(デリバティブ取引)契約をさらに突っ込んで規制するのは「ミステイクになるだろうと思う」。

あはは。この二つは冒頭の語録よりハッキリとあからさまなデリバティブ規制反対論者のものだ。もっと強烈な書き方もある。

If Mr. Greenspan had acted differently during his tenure as Federal Reserve chairman from 1987 to 2006, many economists say, the current crisis might have been averted or muted.

1987年から2006年までFRB議長職にあったとき、もしグリンスパンの行動が違っていたら、現在の危機は避けられていたかまたは控え目なものになっていただろう、と多くのエコノミストは言う。

当方も二三このようなニュアンスのコメントを目にしたことはあるが、「多くのエコノミスト」が言っているとは知らなかった。どれだけ「多く」なのかは分からないものの、時勢が時勢だけに、こういう発言は増えていくのだろう。つまり、諸悪の根源、または、その権化(ごんげ)として針の筵(むしろ)が用意されているのかもしれない。

グッドマン氏は、どうやら、「デリバティブのバブルがあって、それが破裂した。その後の展開はその帰結である」という主張のようだ。ふ〜ん。考えちゃうね。当方� ��「住宅を含む不動産のバブルがあって、それが破裂した。その後の展開はその帰結である」と捉えていたから、サブプライムローンで騒ぐ日本の五大紙はマヌケだと思ってきた(実際のところ「サブプライムローン」という曖昧な言葉が基軸ではアメリカの光景が見えない。とはいえ、仮に、「サブプライム・モーゲージ」と当たり前に認識したとて、その定義は当のアメリカ人でさえ曖昧でアバウトでいい加減なのだ。ある人は「3−27モーゲージ」をいい、ある人は「IOモーゲージ利率調節型」をいい、ある人は「アルトAモーゲージ」をいいマチマチである)。

グッドマン氏の主張は傾聴に値する。当方も、住宅バブルを発生させた一因として、保証・保険・ヘッジ・スワップという金融ツールの百花繚乱で金融業界は「� ��スク不感症」に陥っていた、と考えているからだ。また、そのことは『2006年までに何があったのか』(Click here)で「軽く」書いてみた。そして、不動産価格の下落という「資産価値低下」が保証やスワップなどによりダブル・トリップルで各社財務諸表に計上され合算数字が大風呂敷になっているのではなかろうか、とも疑っている。

そのグッドマン氏だが、デリバティブ市場は531トリリオンドルだという。円に換算しようとして、ハタと困った。≒5万3100兆円とすればいいのか、≒5京3100兆円とすればいいのか、分からない(お〜い、1ドル=1新円にデノミしてくれ!)。なんとまあ、スゴイ金額なのだ。

スワップ市場が62トリリオンドル(≒6200兆円)だという数字に度肝を抜いたが、それを上回る。
全米(住宅)モーゲージ残高の12トリリオンドル(≒1200兆円)なんてスズメの涙にも見えよう。
おそらく、グッドマン氏があげるデリバティブ市場の数字には、スワップ(CDS)も、住宅モーゲージ担保証券(RMBS)を含むモーゲージ担保証券(MBS)も、ボンド・インシュアランスも、みな合算されているのだろうが、記事のニュアンスとして一般保険まで入っている可能性もある。

まあ、新聞記事だからそれなりのものとして読んでおこう。だが、論旨は参考になった。金融業界の「リスク不感症」についてもっと突っ込むべきだ。そのお咎めとして金融業界が規模縮小するのは摂理でもある。社会に必要な業界なのだから、需要がある以上、全滅することは、ない。仮に全滅しても、新しい担い手が現れる。

【同日追記】
日経社説が大和生命保険の破綻を取り上げている(「金融危機の予防へ日本も周到な備えを(10/11)」)。相変わらず、『昨年夏以降、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)の問題に端を発した世界的な金融危機の局面で、国内の金融機関が破綻したのは初めてだ。』などと書いているのがオモシロい。

また、『サブプライム関連商品の損失に加え、急激な株安などで保有する有価証券の価値が急に下がり、9月末中間期で114億円の債務超過になった。』と分析しているのだが、「サブプライム関連商品」って一体何のことなんだろう。

多分、上記のRMBS=住宅モーゲージ担保証券のことだと思うのだが、その中の「サブプライム(信用力の低い個人)」とかいう訳がわからないモー� �ージだけをプールした特殊な高利回りRMBSって、あるのかねえ。そう言わずとも、住宅価格の下落でRMBSはみな運用不調なのだ。サブプライムローンを出発点にしていると、意味不明な商品が登場する。書いている本人も「サブプライム関連商品」が何なのかを分かってないんじゃないの。今更急に「住宅モーゲージ担保証券」とは書きにくいのかもしれない。

トピック(1715):「Bush's statement on financial crisis」   2008/10/13

Thank you all very much. Good morning. (Treasury) Secretary (Henry) Paulson, Secretary (of State Condoleezza) Rice and I just had a productive discussion with finance ministers of America's partners in the G7 _ Canada, France, Germany, Great Britain, Italy, and Japan. I'm pleased to be with Prime Minister (Jean-Claude) Juncker of Luxembourg, who is the president of the Eurogroup of countries, Managing Director (Dominique) Strauss-Kahn of the International Monetary Fund, President (Robert) Zoellick of the World Bank, Chairman (Mario) Draghi of the Financial Stability Forum. Thank you all for coming.

どうも、皆さん、どうも。おはようさん。ポールソン財務長官とライス国務長官と私は、アメリカのパートナーであるG7財務大臣の方々(カナダ・フランス・ドイツ・イギリス・イタリア・日本)と生産的な議論を今しがた終えたばかりです。嬉しいことに、EC大統領であるルクセンブルグのユンカー首相、IMFのストロース=カーン専務理事、世界銀行のゼーリック総裁、金融安定フォーラム(FSF)のドラギ議長、こういった方々が参加されています。みなさん、(ワシントンへ)来ていただきありがとう。

あはは。全員集合、ということでっか。世界的規模で経済がギシギシと崩壊への音を立てているときに、幼児ブッシュは最近なんとも晴れやかな顔をしている。第二次世界大恐慌を事前に防いだ大統領とし て後世の世界史に記載されると、誰が吹き込んだのか(ポールソンに決まってるじゃん)、嬉しさを隠し切れない。11日付Wポストに掲載されたAP電の「Bush's statement on financial crisis」である。

最近の報道を読んでいると、イタリアのマリオ・バラギという御仁は世界の金融マフィア仲間でそこそこ幅を利かす大物のようだ(無知丸出し)。今回、G7の討論資料を取り纏めたのは彼が取り仕切るFSFだという。G7では実質的な討論がほとんど行われず、FSF提案丸呑みというのが実態だったらしい。それも、項目だけである。

まあ、幼児ブッシュとしては、皆々様を背後に従えてローズガーデンで声明を読み上げる写真が大事なのだろう。

最近の株式市場が大揺れしているのは、全世界で明るみに出た・出つつある不動産下落に端を発した「資産価値の低下」が根っこにありそこへの貸借関係で債権債務の履行がスムーズに行われない事情があるとしても、幼児ブッシュの異常なハシャギ方が� ��機感を煽っているから過剰に反応しているのかもしれない。


アメリカは国際的にどのように表示されている

旧来型の保証・ヘッジやボンド保険・スワップ(≒リスク回避保険)などのエキゾチックなデリバティブ(金融派生商品)やが世の隅々まで行き渡る。それ故「リスク不感症」に陥った金融業界は、得た保証や掛けた保険に「安心」してリスキーな物件に取り組み、その愚行に躍った結果、バブルが発生した。実体的には不動産バブルであり、金融現象的にはデリバティブ・バブルとも言えよう。そして前提条件である根っこ(資産価値の上昇)が崩れたために保証・保険の「計算式」が正常に機能しなくなった。

資産価値の思わぬ下落に直面して、貸借関係の清算や金融機関同士の相互融通に齟齬をきたす。「無いものは払えねえよ」と金融� ��裏本質=詐欺と暴力とが顔を出し始めた。保証してもらっていたのに、保険をかけていたのに、保証してもらえず、保険金がおりない、という短期資金の逼迫した状況が出来し、それが続いているのだ。

2007年半ばに英国政府が税金投入で梃入れした地方銀行ノーザン・ロックは象徴的な出来事なのではなかろうか。結局、2008年2月英国政府はノーザン・ロックを国有化した。もともとニューカッスル辺りでチンマリと住宅融資をやっていたノーザン・ロックをリーマンがモーゲージ担保証券(MBS)の世界へ引きずり込んだ。哀れ、資金繰りが二進も三進もいかなくなってしまった。

ハッキリした事情は分からないが、そのMBSはリーマンが裏書していたという。だが、「払えねえよ」と居直られたら、訴訟す るか、払ってもらうまでガマンするか(延滞金利を取ったとしても)、選択肢が豊富にあるわけではない。

そのリーマンが破綻しちゃった以上、ノーザン・ロックの債権は(もしそれがあるとしても)最早棚上げである。そのリーマンから「優秀な人材」を譲渡してもらうというのだから、野村Hのアホさ加減は開いた口が塞がらぬ。今後は行政指導や規制・監督が強化されてリーマン流は通用しなくなるのが目に見えている。野村Hが評価するリーマンの「優秀な人材」とは「高給取りで使い物にならぬ廃材」というしかない。

次のバブルが到来する10年先20年先まで無駄飯を食わせますか。ところで、マヌケな投資家は、野村Hだけではなさそうだ。

9月24日付トピック(1703)で、モルガン・スタンレーの� ��式取得20%を取り上げて三菱UFJを「マヌケな投資家」の二の舞かと危惧したが、10月12日付日経「三菱UFJ、モルガン出資へ大詰めの調整」によれば、90億ドルの払い込みが14日に迫っているという。日経記事だからアテにはできないものの、契約はモル・スタ1株当り25.25ドルだと書かれていた。

あはは。下落中のモル・スタ株は先週末に10ドル以下である。既に60%以上が吹っ飛んだ!!!!。約9000億円相当分を払い込んで約3500億円相当分のモル・スタ株を取得することになる。「I told you」「走れば躓く」

政治・経済は全くのド素人だが、「筋」を追っていれば、最近、物事がよく見えるような気がするよ。錯覚かもしれないけどね。

【同日追記:夜】
12日付NYタイムズ「U.S. Officials Said to Offer Protection to Japan Investors:By ANDREW ROSS SORKIN」を読んでモル・スタと三菱UFJの契約内容が少しは分かった(日経は読者を失うぞ)。

三菱UFJはモル・スタ株21%の購入を先月同意した。30億ドルは普通株で1株当り25.35ドル(タイポかどうか不明だがこの価格)。60億ドルは転換優先株で10%の配当が付き、転換価格は1株当り31.25ドル。

現在、同じく21%は購入するが全株を優先株とし10%の配当をつけろ、78億ドルは1株25.25ドルで普通株へ転換可能、というのが三菱UFJの要求。

まあ、NYタイムズの記事が信用できるということではないが、日経記事は中身が貧弱だよね。

それはそれとして、米国金融市場での拡張を狙った三菱UFJとしては、拙速過ぎたし、レター・オブ・インテントとはいえ、後からバフ ェット氏のゴールドマン投資をマネたって、遅い(三菱UFJのモル・スタ株購入話の翌日、ゴールドマンとモル・スタとが持ち株会社を編成することを発表、その翌日、バフェット氏のゴールドマン投資の発表があった)。なんせ交渉の当事者じゃないから詳細な契約内容や経緯は分からないが、印象としては、三菱UFJのヘマのような気がする。

先週末のモル・スタ株価は9.68ドルだから、オリジナルの合意では、3000億円払って1200億円相当のモル・スタ株を購入することになる。当面の損害は本文で書いたものより少ないが、それでも1800億円だ。それにしても、オリジナルの合意内容と現在の要求内容には天と地ほどの開きがある。ミットモナイというか、ナントいうか・・・・

【同日追記:夜◆
NYタイムズ同記者による続報「Morgan Agrees to Revise Terms of Mitsubishi Deal」によれば、モル・スタは全面譲歩した。全て永久非累積優先株となるから、当面、90億ドルの出資に対して毎年9億ドルの配当が三菱UFJに入る。78億ドルが転換優先株、12億ドルが非転換優先株。

三菱UFJは「買い方」や「交渉の仕方」を知らない井の中の蛙だ。レター・オブ・インテントの時点でこういう要求をしとけよ。相手の弱みにつけ込んでゴリゴリやると、後で、復讐がありますぜ。今回は米国財務省からモル・スタへの説得があったらしい。「呼び水効果」を狙うのだろうが、今、応じる外国銀行があるのかどうか。「後見人制」に入ったFメイ・Fマックの株主のように、株券が紙ッ切れ同然となるリスク(その他に「国有化」も燻っている)が完全に消滅したわけではない。

果報は寝て待て � ��てば海路の日和あり
家宝は秘て待て 待てば底値の日和あり

トピック(1716):「Mr. Paulson's Client」   2008/10/15

Call it bailout, take two. With credit markets frozen and the financial system teetering on collapse, Treasury Secretary Henry Paulson has decided to invest $250 billion directly in the nation's banks in exchange for an ownership stake. It is a bold move for a desperate time. But Mr. Paulson still has to do more to ensure that American taxpayers, whose money he is investing, get the best deal.

救済だ、ダブルプレーだ、と何とでも言うがよい。信用市場は機能停止で凍てつき金融システムは崩壊寸前で動揺している事態を迎え、所有権益と引き換えに国内銀行へ250ビリオンドル(≒25兆円)を直接投資する、とポールソン財務長官は決めた。絶望の時に大胆な動きである。しかし、ポールソン氏にはそれ以上のことをしてもらわねばならない。彼が使用するのは納税者の金であり、米国の納税者が一番得をするんだと保証することである。

あはは。日本の納税者は、過去に政府が行った金融機関への公的資金投入で、一番得をしましたかねえ。ドブに捨てたつもりでいるんじゃないの?

アメリカは公的資金を投入すべきだ、なんて他所の国の余計なお世話をするヒマがあったら、半島系金融機関へ捨てた� �兆円の返済や遡及して被投入銀行の1割配当実行や、社説で論じたらどうなのだろう。日本官僚と同じ穴の狢である五大紙には、そういう姿勢がない。14日付NYタイムズに掲載されたエディトリアル「Mr. Paulson's Client」の書き出しである。ポールソンが顧客とすべきは金融機関ではなく納税者であるべきだ、ということですな。

それにしても、株式市場の群集心理は理性に欠けているのではなかろうか。大暴落の後、大反騰である。月曜日ダウは936ドル上げ、連休明けの火曜日日経平均は1171円上げた。欧州も同様だ。肝に銘ずべきは、不動産価格の下落によって資産価値が低下した事実は、700ビリオンの使用用途が拡大解釈されたって、消えないということだろう。バブルで愚行に奔った金融機関は、少なくとも消えたバブルの分だけ企業収縮し業界収縮しなければならない。

そして、米国住宅価格(及びコマーシャル不動産価格)の下落はまだまだ続くのだ。返済義務の不履行は続行中で、銀行葬儀の執行は今後もやらね� �ならない。今回の措置で葬儀の数が少なくなれば、それは不自然に「偽底」を捏造することになり、健康体に戻ることなく病巣を抱えたままの米国経済の不景気はかなり長期化することになろう。

ポールソン流税金投入の特徴は優先株の取得を主張していることだ。つまり、年10%程度の配当を求めて国庫に戻せという趣旨である。こういう感覚は日本の誇る「公的資金投入」時にもあったのだろうか。

銀行資本への税金投入は当方の好むところではない。しかし、NYタイムズのエディトリアルはそこそこにこれを評価している。趣味の違いは歴然としているが、とはいえ、釘を刺すのを忘れたわけではない。最後の段を次のように書いて〆た。

We are pleased that Mr. Paulson is flexible enough to adapt his ideas to manage a crisis that has, as yet, defied all attempts to control it. But as a former investment banker, Mr. Paulson must remember that the American taxpayer — not the banks — is now his client, and he is using taxpayer dollars. Congress has the duty to ensure that he does.

ポールソン氏が十分に柔軟姿勢を見せてコントロールしようにもその方策がいまだに見つからない危機になんとか対処する考え方を採用したことは、我々の歓迎するところだ。しかし、ポールソン氏は、その前歴が投資銀行家(証券屋)であっても、銀行が(彼の顧客なの)ではなくて、今や米国の納税者こそが彼の顧客であること、そして彼が使うのは納税者のドルであること、を忘れてはならない。彼が忘れないこと、これを確実にする義務が、議会にはある。

まあ、ここまで米国納税者の金と強調されれば、一言イヤミを言いたくなる御仁もいようか。確かに、ポールソンが使用するのは米政府の資金だから米国民の税金と言ってもいい。しかし、なかには米国債の発行で調達する資金だってある。それは、他国民の金 ですぞ。もっとも、その償還義務は米政府にあるから、最終的な義務を米国民が負っているには違いない。

現在9.6トリリオンドル(≒960兆円)発行されている米国債は、10.6トリリオンドル(≒1060兆円)から11.3トリリオンドル(≒1130兆円)へと増枠された(トピック(1702))。

20兆円の「差押え救済・FメイFマック救出」及び70兆円の「2008年緊急経済安定化法」の資金捻出は実質的に米国債の発行で賄われると見るのだが(何故なら「安定化法」には減税が含まれる)、金に色はつけられない。まあ、納税者を持ち上げて格好つけたがる気持ちは分かる。米国債、売れればいいね。これを売るためにG7を含む主要国をワシントンへ呼んで国際協調を誓約させたのかもしれん。

【同 日追記】
「サブプライム祭り」で踊ってきた五大紙だが、このところ変調の兆しが見える。本日付朝日の社説「株価急上昇―反発力を次への布石に」には下記の一節があった。

『また実体経済面では、住宅など資産価格の世界的な下落基調がやまない限り、悪化に歯止めがかからない。』

あはは。ナンカ、パクられたような気分、だが、こんなちっぽけなHPをパクることもあるまい。世の中、だんだんと米国の光景が見えるようになったのだろう。遅きに失したとはいえ「サブプライム祭り」から脱皮することはいいことだ。しかし、反省の一文を社説に掲げなければ、読者はチンプンカンプンなのではなかろうか。他厳自甘。

日経社説にも変調はある。本日付「始動した緊急協調、一段と実効高めよ(10/15) 」で『証券化商品などに関連した巨額損失の処理に伴い』とあるが、従来は「サブプライム関連商品」(そんな商品はない!)と言っていたのだが「証券化商品」に変わっている。ハッキリと「モーゲージ担保証券(MBSorRMBS)」と言えばいいのに、とにかく徹底して、「モーゲージ」という言葉はお嫌いなようだ。

トピック(1717):「No Quick Fix for Housing Prices」   2008/10/16

The Treasury Department's rescue plan for the U.S. financial industry doesn't directly address the root cause of the crisis: falling home prices.

米国金融業界を対象とした財務省の救出プランは、危機の根本原因を直接に言及していない。それは住宅価格の下落である。

パチパチパチパチ。拍手。そうなんですよ、根っこは住宅価格下落にある。それがなければ、差押えなんて起きない、Fメイ・Fマックも安泰だ、RMBSがジャンクにもならない。15日付WSジャーナル「No Quick Fix for Housing Prices:By RUTH SIMON and MICHAEL CORKERY」の書き出しである。自分と似たような意見の記事に出会うと、嬉しくなってしまう。なんとも、子供っぽい。

The government's plan, which includes taking stakes in major financial institutions and temporarily guaranteeing certain new bank debt, could cushion the economy and thus the housing market from further blows. But many economists say additional measures are needed to stimulate demand for homes and to reduce mortgage delinquencies and foreclosures.


セネカフォールズニューヨーク州税

主要金融機関の株式権益を取得すること及び一定程度の新規銀行債を一時的に保証することを含む政府のプランは、経済を、従って住宅市場をも、さらなる痛手からクッション材的に救援するかもしれない。しかし、住宅の需要を刺激しモーゲージの支払延滞や差押えを減ずるために追加的な措置が必要だ、と多くのエコノミストは言う。

あはは。バカだねえ。出だしは正論だったけれど、二段目でズッコケル。あれだけバブルで躍って住宅を過剰供給したのだから需給バランスは大幅に崩れているのだ。

エキゾチックなモーゲージの初期2〜5年間は超低額返済するというツールを利用して、貧乏人や信用力の低い人が本来買えない価格の住宅を買っ た(月々の負担が少なくて済む超低額返済期間内に転売してキャピタルゲインを目論む)だけではなく、金持ちや投機家やはたまた中間層までその種のモーゲージを利用してセカンドハウス・転売用住宅・貸家用住宅を買っていたのである。その仮需に応じて住宅業界は過剰供給した。だからバブルとなったのだ。

誰がどう考えたって、相当な住宅価格下落がなければ需給バランスが平衡に戻ることはあるまい。カリフォルニアやフロリダやネバダなどでは50%下落した地域もあるが、全米平均での下落率はピークから20%前後だろう。それに、モーゲージの支払延滞や差押えは、「モーゲージ原因」によるものよりも、アメリカ人の「レバレッジ依存症」(借金漬け)の性癖により「住宅担保ローン借り過ぎ原因」によるものの 方が圧倒的に多いのだ。住宅価格が下落したため抵当権より劣位にある担保権を持った住宅担保ローン融資者が追加担保を求め・貸し剥がしを試みる、その結果、資金繰りに窮した「レバレッジ依存症」はモーゲージの返済が滞るのである。

ここら辺は、住宅購入時の借金「モーゲージ(Mortgage)」と住宅取得後の借金「住宅担保ローン(Home Equity Loan)」との区別を認識しないと、理解できない。つまり、日本の五大紙を隅から隅まで読んでも、こういう光景を読み取るのは不可能である。それは五大紙がモーゲージという言葉を忌避的に無視し、サブプライム(ローン)という言葉へ熱狂的に執着し過ぎたからだ。

住宅需要を刺激すること、及び、差押えを減ずること、そんな魔術があるのかどうか、「多くのエコノミスト」の見解を期待をもって読んでみる。

ハーバート大のエコノミスト「Martin Feldstein」の提言:住宅所有者のモーゲージの20%を低利モーゲージに置き換える。何だ?これは。言いたいことは理解してあげるけど、程度が低いねえ。差押えだけに関して言えば、少々役には立つが、どうして200万戸の差押えが発生しようとしているのか、現場の基本的なことをこの人は理解していない。仮にモーゲージ元本を減額して(モーゲージ債権者は実損を計上しなければならないが)急場を凌いでも、1/3はまた支払遅延に陥るという見解もある。

コロンビア・ビジネス・スクールの「Chris Mayer」の提言:需要を喚起するためモーゲージの利率を5.25%に下げる。これは住宅購入者の月々返済負担が軽くなるからいいかもしれないが、需給バランスを平衡にするまで効果があるかどうかは疑問だ。どうせなら、FFレート+3=4.5%にしたらいい。

結局、「多くのエコノミスト」で具体的な提言をしているのは、この二人だけだ。大山鳴動して鼠一匹。

あはは。エコノミストって大したことないねえ。それより、財務省傘下の連邦住宅局(FHA)が既にやっている十分な頭金支払を伴うノーマルな「モーゲージ契約」の提供(徐々に増えつつある)の方が、地味だが堅実なやり方だろう。

住宅価格は落ちるところまで落ちるよりしょうがあるまい。エコノミストが上記の程度のことしか言えないのであれば 、当方が劇薬を教えて進ぜよう。アメリカ経済全体を超インフレに誘導することは、住宅市場に限って言えば解決策の一つになり得る。あれもこれも高くなれば、やがて折り合える水準で住宅価格に割安感・値頃感が出てくるだろう。その結果(あるいは原因であるかもしれない)、猛烈なドル安になるが、アメリカ人はドルでしかモノを考えないから、あまり関係ない。

実は、原油価格が高騰したとき(7月に150ドル目前まで高騰したが現在は70ドル台へ下落)、これは住宅価格下落をストップさせるための陰謀ではないかと思ったことがある。トピックのどこかでそんなことを書いた。まあ、屁理屈的な無責任極まりない暴論であろう。

書き出しを読んで期待したのだが、なんともツマラナイ記事だった。竜頭蛇尾。

一番健康的で経済の摂理に沿った解決法は、金融機関が不良モーゲージ債権を投売りすることである。その結果、不動産価格は早期に底値へ達し、住宅購買意欲が回復するだろう。そしてモノは有り余っているのだから、米国のマイホーム率は70%から80%へ上昇するかも知れない。当然、金融機関の多くは規模縮小・倒産を強いられる。しかし、需要がある限り、銀行がなくなることはないし、かなりのゴタゴタはあっても全世界がダルフール状態になるわけではない。

銀行が潰れたらタイヘンなことになるという威嚇に怯えて、愚行に奔った銀行へ甘い対応がなされている。基礎的な経済基盤は、30年代とははるかに違う。貸さなきゃ生きられない銀行が貸し渋りをするのであれば、税金を使用してそんな銀行を延命さ� ��たところで何の益にもなるまい。どうせ貸さない銀行が存続したって、金融機関としての機能を喪失しているのだから意味がないのだ。それなら、潰したって結果は同じだろう。心配することはない、需要がある限り、代行する銀行が必ず出てくる。

トピック(1718):「FDIC Chief Raps Rescue for Helping Banks Over Homeowners」   2008/10/17

WASHINGTON -- Federal Deposit Insurance Corp. Chairman Sheila Bair on Wednesday criticized the federal government for failing to take more aggressive steps to prevent Americans from losing their homes, highlighting a rift between her and other senior U.S. officials over terms of the $700 billion rescue package.

ワシントン発:連邦預金保険機構(FDIC)のシーラ・ベアー女史は水曜日(15日)、米国民がマイホームを失わないで済むようにもっと積極的な措置を取るべきだが連邦政府はそれを蔑(ないがし)ろにしている、と批判した。700ビリオンドル(≒70兆円)救出パッケージの中身を巡って彼女と米国高官との間にある亀裂を際立たせている。

The government plan will help stabilize financial markets but it doesn't do enough to address home foreclosures, the root of the crisis, she said in an interview with The Wall Street Journal.

政府プランは金融マーケットの安定化には役立つだろうものの住宅差押えには十分踏み込んでいない。WSジャーナルとのインタビューで彼女はそう言及して住宅差押えこそが危機の根っこであると指摘した。

マアマアの見解ですよね。住宅価格の下落が根本問題だ、と言っているにホボ等しい。ベアー女史は過去に何回か取り上げたが、好漢である。アッ、失礼、女性であった。16日付WSジャーナル「FDIC Chief Raps Rescue for Helping Banks Over Homeowners:By DAMIAN PALETTA」の書き出しである。

米国高官とは誰だ? この記事に添付されている写真が面白い。ベアー女史が演台で喋っている横にポールソンとバーナンキとが雁首揃え項垂(うなだ)れている。銀行が資金調達のため社債を発行するに際してFDICが100%保証する条項へ、彼女は猛反発した。まあ、最終的には、90%保証することで妥協しちゃったんだけどね。

ベアー女史の差押え救済がどこまでの救済なのか記事からはハッキリしないが、「経済安定化法」が金融機関への資本参加へ税金を使用するということへ拡大解釈されたのは残念である。そんなことをしたって、最終的にはダメなものは潰れるか吸収合併されるか、淘汰されるのは過去の事例から明々白々。それなら、しない方がいい。

潰れて然るべきもの を救済して延命させるから市場に不安が残るのだ。潰れて然るべきものがそのまま潰れれば、逆説的だが、残ったものは大丈夫だという安心感が出てくる。詐欺と暴力という裏本質を持った金融マフィアの仲間内助け合い運動に躍らされてはなるまい。

差押え救済も、何から何まで救済するとなると、弊害が出る。「救済太り」が甘い汁を吸うようではマズイ。それに、「レバレッジ依存症」のアメリカ人はお灸をすえる必要もあろう。もっと質実剛健な暮らし向きに変えた方がよい。バタバタとS/Lが倒産した不景気の90年代初頭には、アメリカの庶民に底力(そこぢから)さえ感じた。

あの幼児ブッシュさえ、昨年末から年初にかけてはそこそこマトモな発言をしている。「払いたい人は救済するが払いたくない人は救済� ��ない」。「払いたい人」とは居住用のマイホームを守りたい人である。「払いたくない人」とは「エキゾチックなモーゲージ」を利用してセカンドハウスや転売用・貸家用の住宅やを買った投機家や小金持ちや、もともと支払い能力がないおバカさんたち(例えば年収の5倍もする家を買って超低額返済期間が過ぎたら返済不能になる)のことだ。

ベアー女史は児童書を書いたり議員への道を模索したこともあるリパブリカン。このところまた負け因に戻っちゃったマケインもこういう人を相棒にすればよかった。が、ちょっと、サラ・ペイランのような派手さはないから選挙には向かないかもしれない。

そのサラ・ペイランだが、副大統領候補同士のテレビ討論を見て「核」のことを「ニューキラー」と発音するのにはビック リした。「Nuclear」は「New Killer」でっか。アラスカ時代は余り使用することがなかった用語なのだろう。しょっちゅう目を落として見ていた討論用ポディアムの画面に遠隔アドバイスが出たのか、自分で気が付いたのか、しばらくした後には「ニュークリア」へ修正していたけどね。

トピック(1719):「懐かしきメロディ」   2008/10/18

隣室の居間からテレビ・コマーシャルの音楽が聞こえてくる。懐かしいメロディだ。その音律に誘われて歌詞がふと口をついた。「なのは〜なばたけえに、ゆう〜ひうすれ〜」。不思議なことに、旋律は曲の最後まで憶えていたし、歌詞もオボロゲながらついてくる。

だが、歌手は思いつかないし、歌の題名も分からない。ましてや、作曲者、作詞者も、見当さえつかない。こういう場合便利なのがインターネットの検索である。「菜の花畑」と打ち込んで検索してみた。それらしきものがすぐには見出せず、「歌詞」と用語を追加する。それらしきウェブサイトで拾った「菜の花畠」に変えてみると、出てきた!

お恥かしいが、「菜の花畠に、入日(いりひ)薄(うす)れ」だって。う〜ん。「夕陽(のガンマン )」より「入日」の方がいいかな、とも思う。驚いたのは、それを除いて、歌詞が最後まであっていたことだ。文部省唱歌だという。戦後生まれの当方が小学校で文部省唱歌を教わったかどうか、記憶がハッキリしない。おふくろが歌っていたのか、叔母さんが歌っていたのか、どちらかだろうとも思うのだが、あるいは、小学校の音楽の授業で歌ったから歌詞を覚えていたという可能性もある。それはそれとして、歌詞は次の通り。

一、
  菜の花畠に、入日(いりひ)薄(うす)れ、
  見わたす山の端(は)かすみ深し。
  春風(はるかぜ)そよ吹く、空を見れば、
  夕月(ゆうづき)かかりて、にほひあはし。
二、
  里わの火影(ほかげ)も、森の色も、
  田中の小路(こみち)をたどる人も、
  蛙(かわず)のなくねも、鐘の音も、
  さながらかすめるおぼろ 月夜。

こうして歌詞を眺めると、風景の描写にほのぼのとした情感が溢れている。演歌を体質的に受け入れない当方だが(演歌は日本の心などと聞くと半島に占領された列島を想像してゾッとする)、この歌曲は、スンナリと馴染めて違和感がない。歌詞の二番は全く忘却の彼方だった。そこに題名が出ている。「朧月夜」。そして「作詞高野辰之、作曲岡野貞一」となっているが、全く存じ上げない方々だ。

ウィキペディアによると、「1914年(大正3年)『尋常小学唱歌 第六学年用』に初出。以前は小学校6年生の音楽教科書において、日本語の文語詩を教える教材として取り上げられていた」とあるから、戦後でも小学校6年で教わったのかもしれない。

ウィキペディアを頼って、作詞の高野辰之氏は「1876年(明治9年)4月13日 - 1947年(昭和22年)1月25日)、長野県下水内郡永田村(現中野市永江)出身の国文学者、作詞家」だと知る。同じく、岡野貞一氏は「1878年2月16日 - 1941年12月29日)、日本の作曲家である。現在の鳥取県鳥取市古市出身」だそうだ。


作曲の岡野氏がクリスチャンでオルガニストだというのは興味深い。久し振りにギターを手にしてコードを探ってみる。(C)菜の花畠に(G7)い(C)り日(G7)うす(C)れ〜、こんな感じでコードは進行し、C・G7・Amだけでも済みそうだ。しかし、どう考えても、賛美歌臭くない。どことなく、詩吟の旋律を洋楽風にアレンジしたような気がする。

「当時、文部省は作詞者・作曲者に高額な報酬を払い、名は一切出さずまた作者本人も口外しないという契約を交わした」という事情があるようで、作詞家・作曲家は断定できないらしいが、歌曲は残った。文部省もいい仕事をしていた時代があったじゃん、というべきなのかどうか、ちょいと微妙な部分もある。

【� �日追記:朝】
この一年ばかり散々オチョくってきた日経社説だが、このところやっと米国経済の風景が少しは見えてきたらしい。「米金融機関の損失は負の連鎖の恐れ(10/18)」は『住宅バブル崩壊に伴う米金融機関の巨額損失が続いている。』と書き出す。最初からそうなんだよ。

問題の根を適切に据えると、それに続く文章もそこそこ読むに耐える。大分、よくなった。日経にはガンバってもらわなければならない。

ところが、最後から二段目にこんなことを書く。『国際通貨基金(IMF)は今月、サブプライムローン問題による世界の金融機関の損失見通しを1兆4000億ドルと試算、わずか6カ月前の試算から1.5倍に修正した』。まだサブプライムローン熱が冷めない。折角マトモな組立てに近付いたのだからサブプライムは卒業して欲し かった。

これは、明らかに、ウソ、だ。IMFの原文を当るのも面倒くさいし、IMFの統計が信用できるものでもないことは既述のことだが、「サブプライムローン問題による世界の金融機関の損失」なんてそんな多額であるハズがない。第一、IMF文書では「サブプライムローン」という用語を使っていないと思われる(とはいえ過去のIMF文書には「サブプライムローン」という表現はある)。

IMFが常識的な用語使用をしていれば、ここは「モーゲージ及びRMBSの損失」と書くハズであり、あるいは「モーゲージ及びRMBS及びホーム・エクイティ・ローンの損失」と書いてあるかもしれない。そうであれば、少々アヤシイが、損失が140兆円ほどあってもよかろう。

仮に、日経社説の言う通りにI� ��Fが表現しているとすれば、それはIMFのチョンボである。そんなチョンボを引用する日経はバカだ。

日経は、米国における住宅関連の融資について住宅取得時の「モーゲージ」と住宅取得後の「ホーム・エクイティ・ローン」との初歩的な区別を認識しないと、デタラメな事象解釈を読者に与え続けるという罪を犯すことになる。商品として売っているだけに、罪は重い。

2005年前後に発行モーゲージの20%にシェアが及んだ「サブプライム・モーゲージ」だが、それは最近のことで、30年ものを中心に考えても米国全モーゲージ中にほんの数パーセントしかない「サブプライム・モーゲージ」(この言葉も定義が曖昧でアメリカ人もイイカゲンに使用している)の損失が140兆円もあるハズがない。

モー� �ージ残高は全米で1200兆円、ホーム・エクイティ・ローンの貸出残は110兆円あるといわれる。差押え物件が仮に売却できたとすると、抵当権のモーゲージは住宅市場価格の分だけ回収できるが(モーゲージ残存元本との差は実損となる)、劣位担保のホーム・エクイティ・ローンはほぼ全額がパーとなるからオソロシイのだ。住宅価格が下落すると何故差押え件数が増えるのかを、おそらく日経は理解していない。自分で消化していないことは「商品」として書くな。

【同日追記:夜】
日経をコケにした以上少々気になって、夜、時間があったのでIMFのHPを覗いてみた。「World Economic Outlook (WEO)」10月版の第1章「Chapter 1 GLOBAL PROSPECTS AND POLICIES」に「Financial System in Crisis」という節があるが、その本文に「注」が2つあって、その「注2」がこうなっている。

As of September 2008, banks reported $518 billion in losses on U.S. subprime mortgages and rlated exposure, the lion's share by U.S. and European banks. Banks also raised $364 billion in new capital. These amounts compare to losses on U.S.-based loans and related sedurities now estimated at $1.4 trillion, of which $640-$735 billion would correspond to banks (IMF, 2008b)

もちろん、サブプライムローンなどという言葉はない(サブプライム・モーゲージという言葉はあるけど)。そして1.4トリリオンドル(≒140兆円)の損失というのは、ローン(多分モーゲージのこと;何故ならすぐ後にRMBSのことを言っているから)とその関連証券(RMBS=住宅モーゲージ担保証券のこと)との合計である。つまり、日経は、モーゲージとRMBSのことを「サブプライム問題」と称していることになる、あるいは、そう解釈していることになる。ヒドイもんだね。

もちろん、サブプライムRMBSなんていうのは世に存在しない。RMBSはモーゲージがプールでごっちゃ混ぜになっているからヤヤコシイ問題になっているのだ。しかし、本文の「注2」からよくこんな数字を拾ったもん� ��ある。

これが、日経の『サブプライムローン問題による世界の金融機関の損失見通しを1兆4000億ドルと試算』の中身でした。つまり、IMFは、(住宅価格の下落により)モーゲージ及びRMBSの損失が140兆円あって、そのうち銀行の損失は64兆円から73.5兆円ある、と言っている。もちろん、個別金融機関からの報告に基づいている合計だから、個別がイイカゲンであれば、合計もイイカゲンだろう。50万戸以上ある差押え物件の評価額なんて、1件1件鑑定するわけでもあるまいし(やったら鑑定士は大儲け)、やったとしても、いくつかの方式で出す鑑定価格(例えば類似物件比較法)など実際に住宅市場が動いていて売れてみなければ分からないのだ。実際には、ある仮定を作って(例えば住宅価格20%下落� ��それをぶち込んだ試算なのだろう。

トピック(1720):「金融サミットで危機克服の工程表示せ(10/21)」   2008/10/21

『米国の住宅バブル崩壊で始まった金融危機は「信用の危機」として世界中の株式市場や銀行間取引を大混乱に陥れた。金融機関の貸し渋り(信用収縮)や株安などで企業や家計の景気心理は冷え込んでおり、実体経済にも悪影響が及ぶのは必至だ。各国首脳が一致して危機を乗り越えようとする意気込みは歓迎できるが、問題はその中身である。』

あはは。ここ数日既にその兆候は見え始めていたがやっとマトモな事象解釈になった。従来は「サブプライムローンに端を発した金融危機」と書き一年ばかり笑わせてくれたのだが、日経がその認識を改めたことは喜ばしい。10月21日付日経社説「金融サミットで危機克服の工程表示せ」の三段目である。

論調を変更することは結構なことだ。しかし、常識的に は、詫びの一言があってしかるべきだろう。つまり、従来はこれこれしかじかと把握していたが、今後はかくの如く判断する、と区切りをつけなければ商品を買っていた読者に不親切極まりない。

他者に対してはケジメをつけろ、としばしば叱正するではないか。自分に甘えてはなるまい。「サブプライム関連損失」などというありもしないインフレ数字を一年間流し続けてきたのだ。このまま「サブプライムローン」を舞台裏に隠してしまっては、「女の腐ったの」と嘲笑されても仕方あるまい。

日経ジョークのポイントは、「サブプライム・モーゲージ」という「サブプライム」も「モーゲージ」も日本人には馴染みのない言葉を、「サブプライム」だけ残し「モーゲージ」を切捨てたことにある。そして、それを「サブプ� �イムローン」と言い換え、単語登録的に「信用力の低い個人向け住宅融資」と定義した。

そのために、日経自体が、アメリカで何が起こっているのか見えないという陥穽に嵌り込む。問題は、スタート時点から住宅バブル破裂による住宅価格下落にあった。それは資産価値の低下であり、そこに貸借関係を結ぶ債権者及び債務者双方が義務の不履行という事態を迎えて苦しむ。債務者は住宅の差押えを余儀なくされ、債権者は不良債権を抱え込むことになった。

「サブプライム・モーゲージ」という言葉については、アメリカでも相当イイカゲンに使用されている。借り手の信用履歴やドキュメント類(所得証明書・預金残高・納税証明書)から「プライム」「アルトA]「サブプライム」という区分もあるが、そう区分してみ� ��ところで、事態解明にそれほど生産的なことでもない。

バブル時に「活躍」した「サブプライム・モーゲージ」を現在では「エキゾチックなモーゲージ」と呼ぶ人も増えている。「サブプライム」で括れないことが認識されているからだ。つまり、変動金利型モーゲージの中で「3−27モーゲージ」とか「IO(インタレスト・オンリー)・モーゲージ」とか、初期2〜5年ほどを「超低額返済」とし(例えば月額500ドル)それ以降を「超高額返済」とする(例えば月額1500ドル)タイプである。

本当の問題は「信用力」でも「低所得」でも「高利」でもなく、「返済額の特異な形式」にあった。

これは明らかに短期転売に有利なモーゲージで、従って、信用力の高い人も投機家も小金持ちも利用する。住宅価� �上昇時には、目論見どおり、あるいは、イザとなったら、売却すれば損はない。というより、キャピタル・ゲインさえ見込める。もちろん、年収の5倍もする住宅をこうしたモーゲージで買うおバカさんも出てきた(通常は年収の3倍が無理なく返済できる借金)。

バブル時には、短期転売用・貸家用・セカンドハウスなど、本来の居住用という実需を遥かに超えた仮需が発生した。あるいは、仮需の多発がバブルを発生させたとも言えようか。相互作用だ。バブルの後には供給過多が残る。

住宅バブルの発生分析には5ポイントばかり挙げることができよう。ヾ靄榲にマイホームはアメリカンドリームだと奨励する政策がある。△修寮策を支援する偽装国策会社Fメイ・Fマックが市中金融機関からモーゲージを買上げて資金� ��金融機関へ提供した(おまけに住宅モーゲージ担保証券=RMBSを商売ネタとする金融機関へ「保証」して稼ぐサイドビジネスも行う)。

そして、2昭の発生に寄与した「エキゾチックなモーゲージ」の開発がある。と同時に、ぅ▲瓮螢人の「レバレッジ依存症」という性癖を挙げなければならない。住宅が値上がりする限り、住宅を担保に借金して豊かな生活を送ることができるからだ。だからこそ、米国庶民は住宅を所有したくなる。

ここでは、住宅取得時のモーゲージと住宅取得後の住宅担保ローン(Home Equity Loan)とをきちんと区別して把握しなければいけない。住宅価格下落に伴う「住宅担保ローン」の取立てや貸し剥がしが住宅所有者の資金繰りを窮地に陥れ、「モーゲージ」をデフォルト→フォークロージャーへと駆り立てている。年末までに200万戸へ達するとされる差押えの本隊は、これだ。

最後に、住宅バブルは金融的に「デリバティブ・バブル」でもあった。旧来型の保証行為や保険に加えて、CDS(Credit Default Swap)に代表される「スワップ(損失補填保険)」取引が証券市場を遥かに上回る野放図な大規模市場へ拡大したが、これでリスキーなものはもはや存在しないという錯覚に陥る。イ海龍睛散罰Δ砲ける「リスク不感症」は住宅バブル発生の一因であるに違いない。

住宅バブルの発生因を上記の5点にまとめると、バブル破裂後に住宅価格が低下し、供給過多で需給バランスが大幅に崩れているからなおも「底」へと低下し続けるのは経済の道理だ。住宅所有者は、差押えられたらアパートへ引越し、差押えを食わなくても借金漬けを自粛し、ともに慎ましく暮らさなければならない。アメリカ庶民はそれができる。それがアメリカの底力だ。

問題は金融機関だろう。少なくとも、資産の低下分だけは、企業縮小・業界縮小をしな� �れば収拾のつけようがないし愚かな行為に走った経営陣の顔触れの交代があってしかるべきだ。金融機関が潰れるとタイヘンなことになる、政官民学が大声を上げるこういう論調にミスリードされ続けてもいいのだろうか、という疑問が湧く。

既述のことだが、不景気になるのは間違いない。しかし、大恐慌にはならないだろう。仮に、そう呼んだとしても、ダルフール状態になるわけではない。不景気が短期に終るか長期化するかは、救済すべきでないものを救済するか否かによる。

共産党一党独裁の支那が資本主義政党一党独裁へと変貌しつつある一方で、自由経済の旗手だった米国がアメリカ社会主義連邦ならぬ「ア連」へ傾いているのは米国弱体化の兆候であろう。既に戦費は枯渇している。

注:深夜、酔いにまか せて「推敲」した。悪化しているかもしれん。



These are our most popular posts:

イスラエル:宇宙は無限だった~ Universe Is Infinite

2012年1月6日... is so devastating that it cannot be cleaned up with purely financial, monetary and "legal" measures, in which case… ... 恐らく、彼らが望むような世界政府を実現 するには、平和的な手段は一つも存在しないという事を認識したに違いありません。 .... そうならなくても、欧州、米国、アジアへの経済のさらなる圧迫が強まり、世界大恐慌が 起きるのは避けられないように思います。 ..... したがって、一見絶望的に見える現在の 状況にもかかわらず、紛争への簡単で、持続的で、公正な解決法は手の届く ... read more

別の知恵を用いた人類救済の基礎知識 " 人類の存亡が気になる人間 ...

こういう考え方から現在の日本の状況を考えると、世界的な大企業のみが力の拡大を 行い続け、個人店や中小企業が潰れ続けていく ...... そして、大恐慌を回避した場合の 失業の場合、再就職も可能だろうが、しかし、大恐慌を容認した場合の失業の場合、 彼らに限らず失業者の再就職は、ほとんど絶望的だろう。 ...... Then, the world looks for the unfortunate reform measure too much in the battle with the evil and the enemy. read more

世界的システムの破裂/3月20ー26日

今年3月20-26日の週に、国際政治において大変重大な危機が訪れ、それは政治的 .... だが、アメリカが危機的な状況にあることは事実であろう。 政治的 .... は1929年の「 世界大恐慌」に匹敵するほどの大きな出来事の始まりとなるだろうということだ。 ...... Measures of large-denomination time deposits will continue to be published by the Board in the Flow of Funds ...... というか、世界内戦と絶望的な貧困の蔓延、環境 破壊と ... read more

鶏屋のスクラップ記事:世界統一・グローバル化

2010年1月5日 ... 世界的な金融投資家として知られており、今日までに1兆3000億円ともいわれる莫大 な個人資産を築いた。 .... 大局的な歴史の推移からいえば、1929年に始まる世界大 恐慌は「旧自由主義」路線の破綻を意味した。 ...... 彼らに共通するのは、絶望的に 思える状況の中で一縷の望みを求めているという点だ。 .... general officers and colonels were identified in the Donald report as potentially subject to disciplinary measures that range from removal from command to letters of reprimand. read more

0 件のコメント:

コメントを投稿