トピック(1711):「Is It 1929 Again?」 2008/10/7Watching the slipping economy and Congress's epic debate over the unprecedented $700 billion financial bailout, it is impossible not to wonder whether this is 1929 all over again. Even sophisticated observers invoke the comparison. Martin Wolf, the chief economics commentator for the Financial Times, began a recent column: "It is just over three score years and ten since the [end of the] Great Depression." What's frightening is not any one event but the prospect that things are slipping out of control. Panic -- political as well as economic -- is the enemy.
滑落する経済を見るにつけ、前代未聞の700ビリオンドル(≒70兆円)金融救済に関する議会の大論争を見るにつけ、これは1929年の二の舞なのではなかろうかと疑わずにはいられまい。事情通の評者でさえ比較してみたくなる。フィナンシャル・タイムズで経済コメンテーター主任をつとめるマーティン・ウルフは最近のコラムをこう書き出した:「大恐慌(の終り)からちょうど70年ちょっとである」。コワイのは、物事が制御不能になって歯止めがかからないという見通しそのものである。政治であれ経済であれ、パニックは敵だ。
There are parallels between then and now, but there are also big differences. Now as then, Americans borrowed heavily before the crisis -- in the 1920s for cars, radios and appliances; in the past decade, for homes or against inflated home values. Now as then, the crisis caught people by surprise and is global in scope. But unlike then, the federal government is a huge part of the economy (20 percent vs. 3 percent in 1929), and its spending -- for Social Security, defense, roads -- provides greater stabilization. Unlike then, government officials have moved quickly, if clumsily, to contain the crisis.
当時と現在とには、類似点がある。一方、相違点もある。当時もそうだったが現在、危機直前のアメリカ人は借金漬けだった。20年代は自動車、ラジオ、家電製品(への借金)。ここ10年は住宅、悪く言えば、吹っかけられた住宅価値(への借金)。当時もそうだったが現在、危機は不意打ちで人々を襲い、世界的な広がりを見せる。とはいえ、当時と違うのは、連邦政府が経済の大きな部分を占めていること(1929年の3%に対して20%)と、政府の支出(社会保障・国防・道路)が安定化へより大きく寄与していることだ。当時と違って、政府高官たちの危機を封じ込める対応は、器用さに欠けていたかもしれないが、素早かった。
あはは。大恐慌再来論が無責任に活字となって出てくる風潮には一本釘を刺� ��たい人がいてもおかしくはない。6日付Wポストのコラム「Is It 1929 Again?:By Robert J. Samuelson」はこう書き出す。
第2次大戦後、米国の不況は10回あった。平均値で言えば、10ヶ月となる不況期間の失業率ピークは7.6%である。最悪の失業率は73〜75年の9%、81〜82年の10.8%だが、直近9月の失業率は6.1%に過ぎない。確か、大恐慌時の失業率は25%だったハズだ。
コラムニストのサミュエルソン氏によれば、預金保証額を25万ドルへ引き上げた政策は引き出しパニックを未然に防ぐという効果があるという。アイルランドとドイツは預金を全額保証する措置をとったらしい。
初めて知ったのだが、FRB議長のバーナンキは大恐慌を専門とする学者だそうだ。この間、FRBは既に1トリリオンドル(≒100兆円)の資金をあれやこれやで金融機関へ融通しているらしい。日� ��の国家予算を超えるスゴイ金額だが、まるでポールソンがバーナンキを救済しているみたいだ。これがNYタイムズだったら、ポールソンがバーナンキを救済し、バーナンキはポールソンの旧職場を救済していると暴きたがるのだろう。
コラムは次の一段落で〆た。
The economy will get worse. The housing glut endures. Cautious consumers have curbed spending. Banks and other financial institutions will suffer more losses. But these are all normal symptoms of recession. Our real vulnerability is a highly complex and global financial system that might resist rescue and revival. The Great Depression resulted from the mix of a weak economy and perverse government policies. If we can avoid a comparable blunder, the great drama of these recent weeks may prove blessedly misleading.
(米国)経済は今後一段と悪化するだろう。住宅の供給過剰は継続する。身構えた消費者は支出を抑制し始めた。銀行や他の金融機関はさらなる損失に七転八倒するだろう。しかし、こうしたことは、みな、不況になればごく当たり前の症状だ。我々が抱える本当の脆弱性は、高度に複雑化して国境を越える金融システムにある。(米国の)救出や再生なんぞに抗うことだってあり得よう。大恐慌は、弱体経済と屈折した各国政策とが織り成した結果であった。もし我々が類似のヘマを避けることができるなら、ここ数週間のスッタモンダはありがたいことにミスリーディングだったと露呈するかもしれない。
結句は、皆のものガタガタ騒ぐでないぞ、という意味だろうか。
愚行と無責任はお咎めを受ければいい。� �が、群集心理の暴走は慎みたいものだ。情報を発信するメディアは節度を弁えるべきだろう。ところで、日本の官僚ほどでもないが、日本メディアもお咎めを自分のものとして自覚しない口である。言ってみれば同類項だから、小手先の部分でしか官僚を攻められないのだ。
永久就職の日本の官僚は特殊な存在だ。日本をこれだけ借金漬けにした愚行と無責任とは咎められて然るべきである。全員無条件で監獄収容すべきだが、それは極端過ぎるというのなら、少々緩めて、全官僚の資産を没収して国庫に戻し1DKか2DKへ収容したらいい。民の税金を無駄にするのは、脱税同様、国賊である。目指すべきは官僚のパートタイマー制しかあるまい。
トピック(1712):「世界株安、米欧は危機の根元を断て」 2008/10/8今朝起き掛けに表題の日経新聞社説を読んだ。週明け、ダウ1万ドル割れ、日経ダウ1万円割れ、欧州株式市場も下げがきつい。先月後半やや回復気味だった上海市場は国慶節による9/27〜10/5の休場が明けて、再び下げ基調となり、ピークから1/3辺りを行く。まさに「世界同時株安」といっていいだろう。困ったものだ。だが、幸いなことに、対ドル、対ユーロで円高である。
首題が「米欧は危機の根元を断て」とくるから、これはスゴイ。皆なす術を知らないのに、日経様だけが特別な処方箋を持っているのかと期待してしまう。書き出しの一段目に『今回は米欧金融機関の破綻など世界的な危機であり、問題の根は深い』とあるから、根の深い所での「解決策」があるらしい。ポールソンやバーナンキを� �びつけて教えてやれよ。
ところが、『同時株安の原因は米欧の金融問題だ』とくる。あはは。なんだよ。皆、普通に言っていることではないか。続いて『10年前の日本のように、銀行などの資本不足の懸念が残っては不信は消えない。危機の根元を断つには、米欧金融機関に公的資金で思い切った資本注入をする必要があろう』とくる。あはは。大上段に構えた「危機の根元」とは、金融機関の資本不足、なのかい。ショボンと拍子が抜ける。
不思議なことに、次の段落では『国際通貨基金(IMF)は米住宅バブル崩壊に伴う世界の金融機関の損失が約1兆4000億ドル(約140兆円)にのぼると推計した』ときた。IMFの文書は何回か読んだが、所詮、個別報告に基づく集計であまりアテにならない(個別そのものがアヤシイから )。とはいえ、不動産バブル崩壊に伴う「資産低下」こそが本来の「問題の根」じゃないのだろうか。
ここら辺が、事象解釈の違いなのだ。堅実な経済成長による「資産上昇」ではなく、バブル景気による「資産上昇」であったが故にそこにはアワの部分が含まれていた。それは何もアメリカだけではない。6/18付トピック(1647)で『4月14日付NYタイムズ「Housing Woes in U.S. Spread Around Globe:By MARK LANDLER」では欧州の住宅バブルを取り上げていて、アイルランドの住宅がこんなに高いのかとビックリした。欧米ともに住宅融資にからむ不良債権を金融機関はワンサと抱えている』と書いた。
リーマンが裏書してノーザンロック(現在イギリスで国営化)をMBS(モーゲージ担保証券)の世界へ引きずり込んだとか、AIGロンドンのスワップ部隊がAIG本体をガタガタにしたとか、関連しそうな事例はいくつかあるが、欧州の住宅バブルはアメリカの住宅バブルが「飛び火」したものであるのかどうか、ハッキリした根拠はない。住宅バブル自体は類似の経済現象だ、としておくのが当面無難だろう。
要するに、危機の根元は不動産バブルの破裂に伴う「資産価値の低下」であり、これは需給バランスが保てるレベル=「� ��」に到達するまで手の施しようがないのだ。その間、資産所有者と貸借関係にあった金融機関は痛手を受け、葬式なり野垂れ死になりそれなりの処分がなされる。それに伴って、株式市場がそれなりの株価下落に悩むのは自然の道理だろう。
さて「問題の根」についてだが、バブル崩壊後の処置については過去に参考事例が二つある。一つはS/L危機。このときアメリカはRTCが倒産した銀行の債権である不動産を大安売りした。従って、不動産価格は早期に底へ達し、4〜5年で経済は回復する。二つ目は日本のバブル崩壊。このとき日本は倒産すべき銀行を救済して不動産価格の下落に歯止めをかけた。従って、不動産は「偽底」を形成し、日本経済は長期に悩む。
S/L危機例では助演賞役者がいて、不良債権であるべ� ��不動産を高値で買い漁ったマヌケな投資家(日本)がババを引いた。アメリカに代って大損こいてくれる。今回のアメリカでは、マヌケな投資家が現れず、ババを引いたのは自国の偽装国策会社=Fメイ・Fマックであった。
そこで、ドモリのポールソンは第三の道(=金融機関が保持する不良債権及び不良関連証券を税金を使用して買上げる)を試行しようとしている。日本の二の舞はしたくないということもあろうが、「税金」の使用だから納税者へ損をかけないという建前を堅持する(できるかどうかは別にして)のが特徴的だ。
本来、米国金融機関は己の非を悔いて不良債権及び不良関連証券を連邦政府に投売りすべきである。住宅価格の下落が止まらない以上、抱えていたら損失がさらに増えるのは間違いない。しか も、差押え物件の管理費や保険(フラッド・インシュアランス等)や固定資産税や諸々の費用はバカにならないほど嵩む。だが、政府が買い取ってくれるとなると、スケベ根性が出てくるのだろう。遅きに失したとはいえ米国金融機関は「The first loss is the best loss」の精神を忘れてはならない。【同日追記】:本日の天声人語に「見切り千両」とありました。
トピック(1713):「Central Banks Coordinate Global Cut in Interest Rates」 2008/10/9Central banks around the world cut short-term interest rates by up to half a percent on Wednesday after investors across Asia and Europe unleashed waves of sell orders onto already depressed stock exchanges.
弱り目に祟り目状態となっていた株式売買へアジアからヨーロッパにかけて投資家連中が一連の売り注文を解き放たれたように浴びせた後、水曜日(8日)各国の中央銀行は短期金利のレートを最大0.5%まで切り下げた。
The Federal Reserve, the European Central Bank and other central banks from Britain and Switzerland to Canada and China announced rate reductions within seconds of one another. The British government separately announced a plan to pump billions of pounds into the country's leading banks as part of a plan that would result in considerably greater government influence over the financial sector there.
FRB、欧州中央銀行(ECB)及びイギリス・スイスからカナダ・支那に至る他の中央銀行は次々に間髪を置かず利下げを発表した。それとは別に、英国政府は国内主力銀行へ数ビリオン・ポンド(≒数千億円x1.73)を注入するプランを発表した。イギリスの金融部門に対する政府の影響力(行使)としてかなり大掛かりなものとなるハズのプランの一部である。
The Fed said in a statement that, because of weakening economic activity, it had cut the Federal funds target rate by half a percentage point, to 1.5 percent. It also cut its discount rate by the same amount. The vote was unanimous.
弱体化した経済活動を鑑みてFFレートを0.5ポイント切り下げ1.5パーセントにするとFRBは声明文を出した。同時に、公定歩合を同様に切り下げる。(予定外の連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ)全会一致の投票となった。
なるほど、皆さん、よく学習しているね。大恐慌招来の反省として、各国政府の政策がバラバラだったことが一つ挙げられている。今回は早めに協調して対処しようというわけだ。8日付NYタイムズ「Central Banks Coordinate Global Cut in Interest Rates:By KEITH BRADSHER, DAVID JOLLY and EDMUND L. ANDREWS」の書き出しである。
あれ!? とすると、日本は蚊帳の外か、と思うなかれ。タイトルからしてNYタイムズは「利下げ」に注目した記事になっているだけのことだ。同日発表されたFRBのリリース「Joint Statement by Central Banks」では三段落の最後がこうなっている。